更新日:2023.06.01

今月の家電リサイクル語録
「家電リサイクル20周年記念 
特別対談」
【前編】

去る2023年4月6日、大阪のパナソニック ミュージアム 貴賓室に平林金属(株)平林社長とハリタ金属(株)張田社長をお招きし、「家電リサイクル20周年記念 特別対談」を実施させていただきました。
対談では、家電リサイクル20周年を迎え、これまでの活動を振り返っていただくと共に、いま現在の思いやこれからに向けての取り組みなどについてお話いただきました。その内容を前編・後編の2回に分けてご紹介します。

  •  ハリタ金属(株)
    代表取締役社長 

    張田 真 
  •  平林金属(株)
    代表取締役社長 

    平林 実 

【前編】これまでを振り返って、いま現在の思い ——
  家電リサイクルと共に歩んできた20年だった

—— そもそも、家電リサイクル事業へ参入された経緯は?
  • 平林
    社長
  • 1996年にドイツで循環経済法が施行されたことを受け、1997年に視察へ参りました。環境への取組に関して、日本はヨーロッパの5年遅れという時代だったので、2001年には何かしら新たな法律が施行されるであろうと見越しての視察でした。ドイツでは、業界の統廃合が進み、リサイクル業界では一番小さな会社で従業員800人クラス、大きい会社では従業員4000人規模の会社しか存在していませんでした。法律で定められたレベルを達成するには、大きい企業しか生き残れない。いま、決断して取り組まないと、と強く感じました。

平林金属(株)代表取締役社長 平林 実 

  • 張田
    社長
  • 東京で薬剤師として勤めるなか、2000年に当時社長である父より突然、一本の電話がありました。「家電リサイクル法という法律が新しくできる。うちの会社がその指定を受けることに決まった。帰ってこい!」と。本当に青天の霹靂で、「家電リサイクルって何だ?」という認識のなか、実家へ戻ることになりまして…。家電リサイクルがご縁となり家業を継ぐことになったという訳です。
—— これまでのご苦労については?
  • 平林
    社長
  • まず、家電リサイクルは既存事業とは分けて進めようと考えました。土地を取得して新たなRP(リサイクルプラント:再商品化施設)を建てようと検討するなか、どのくらいの仕事が返ってくるか分からないのにそんな大きな投資をするのかと反対意見も少なくありませんでした。また、実際に、SY(ストックヤード:指定引取場所)を作ろうと思って改装工事を行った場所がありましたが、地元の反対で開業することができませんでした。それだけの投資をして本当に大丈夫なのか?それだけの仕事はあるのか?といった周囲の不安な思いをひしひしと感じるなかでのスタートでしたね。
  • 張田
    社長
  • 家電リサイクルの認定工場に選定されたということで、まずは安全とコンプライアンス、この2つをトップギアに入れなければならないという責任の重みを感じ意識改革からのスタートでした。
    第1回目の家電リサイクルの全体会議で、「野球はストライク3つでアウト、3アウトでチェンジですが、家電リサイクルは1ストライクでアウト、チェンジです」と説明されました。この言葉をいまでもよく覚えていて、より手綱を引き締めて取り組まなければならないと、その時誓ったことをいまも心に留めております。

ハリタ金属(株)代表取締役社長 張田 真 

  • 張田
    社長
  • また同じ会議で、平林社長も印象的な言葉をおっしゃっておられました。「野球は際どいボールやクセ球を投げて勝負するものですが、家電リサイクルはど真ん中に投げてホームランを打ってもらうものだ」と。安全とコンプライアンス、特にこの2つにはど真ん中を投げ続けることだと学んだ日からいまでも経営のど真ん中に据えています。
  • 平林
    社長
  • 実際に家電リサイクルがスタートしてみると、夏場の繁忙期が来て、廃家電がどんどん集まってきました。廃家電を入れておくカゴもない、場所もない、人手もない、ナイナイづくしの状態に陥りました。どんどん溜まっていく廃家電の山をどうやって処理するか、迫りくるプレッシャーは半端ない恐怖で、いまでも夢に出てきます。
—— メーカーに対する思い、求めることは?
  • 平林
    社長
  • 最近では、ガラスドアの冷蔵庫なども増えていますが、メーカー側も後々のリサイクルのことまで考えた素材で商品を開発していただければと感じています。ガラスは取り外しにくく、リサイクルが非常に難しい。なかなかリサイクル料金が値上げできないなか、条件の悪い素材が多くなることはリサイクル工場の収支を大きく圧迫します。これからは、動脈側のメーカーと静脈側の私たちが一緒になって家電リサイクルを進めることがより重要になってくるのではないでしょうか。
  • 張田
    社長
  • 色々な新しい家電が次々と発売されるなか、回収される商品の素材に対する課題もどんどん変わってきていきます。これでもうしばらく設備投資はないだろうと思っても、これまで新たな設備投資案件を繰り返してきました。メーカー側には、これから本格的に訪れるであろう環境配慮設計の時代に、スムーズに対応いただき、その負荷を減らしていただければと思います。また次の段階として、人とロボットをベストミックスした新しいリサイクル処理を行う時代が近づいていると感じています。カーボンニュートラルの観点から社会的な要請も高まるなか、高度なマテリアルリサイクルの実現の手段として、ロボットの必要性を捉えています。メーカーの商品設計段階でそこまで考えていただければ、私たちの業界だけではとても成し得なかったリサイクル処理プロセスのロボット化、自動化というところも鮮明に見えてくると思います。その部分に大きく期待しています。
  • 平林
    社長
  • 製品を売るのではなく、製品の所有権はメーカーが保持したまま消費者にはサブスクリプションとして機能を提供し、製品自体は100%回収していくということも、家電リサイクルをこれまで以上に推進するひとつの策だと思います。ただ、メーカーに対して一番に言いたいのは感謝しかないということです。既存事業がリーマンショックや新型コロナなどの様々な景気の影響を受ける中、家電リサイクルという別の事業軸があったことは非常に助かりました。
  • 張田
    社長
  • 当社は総合リサイクル企業ですが、家電リサイクルなしにいまの私たちはないと思っております。先ほど述べた安全やコンプライアンスだけではなく、家電リサイクルに取り組むことで、当初当社にはなかった業務の可視化や作業手順書等の整備が確立し業界のなかでは比較的先んじて意識改革と経営の革新を行えたことが大きかったと大変感謝しています。

パナソニック ミュージアムを興味深く見学された
平林社長と張田社長