更新日:2023.07.03
今月の家電リサイクル語録
「家電リサイクル20周年記念
特別対談」
【後編】
- ハリタ金属(株)
代表取締役社長
張田 真 様 - 平林金属(株)
代表取締役社長
平林 実 様
【後編】いま現在の課題とこれからの歩み ——
家電リサイクルがなければ、ここまで来られなかった
—— これからの家電リサイクルの課題は?
- 張田
社長 - やはり、家電リサイクルの次世代を担う人材の確保ですね。人材の採用、育成が一丁目一番地です。これから超少子高齢化がますます進行し、特に地方では異次元の人材不足が予想されます。そんななか、安定した雇用を確保できる組織になるには、10年単位での継続した努力が必要です。そのために先手を打って取り組んできました。これからは将来の担い手となる20代の若い世代に関心を持ってもらうため、リサイクルの未来に「ワクワク」を感じてもらい、共感してもらうことが何より重要だと感じております。
ハリタ金属(株)代表取締役社長 張田 真 様
- 平林
社長 - 私も若い世代の人材採用が一番の課題であり、一番大切な仕事だと考えています。具体的には、工場・事務所での働きやすさやイメージの改善、リサイクル業界全体の認知度アップが急務ですね。昔の工場のイメージのままで「暑い時も汗を流して仕事をするんだ、根性だ!」みたいなことを言っていたら若い人材は来てくれないですよね。そうではなく、当社に興味を持っていただいた就活生の方には、業界の明るい未来が見えるようなことを伝えたり、いまの若者の考え方に理解を示したりして、良いイメージを持ってもらえるように努めています。
—— どのように人材採用に取り組まれていますか?
- 平林
社長 - 若い人材の確保に取り組んで30数年になりますが、当初は全く人が採れなかったんです。そんななか、最初に始めたのは、学生さんに手紙を書いて当社に来てもらうことでした。当時は会議室がなかったので喫茶店で会って話をし、当社を知ってもらうという取り組みを行っていました。そのようにして採用した世代が、いまは工場長など中核の人材に育っています。昔は内定を出しても、親に反対されて辞退してしまった…ということもありましたが、おかげさまで地元でも認知され、「親が行けって言うので志望しました」なんていう人も増え、継続して取り組んだ成果が出ています。いまでは、「人が入りづらいスクラップ工場になぜ人が集まる」といったテーマで求人に関する講演の講師に呼ばれるくらいで、試験や面接を経て、また当社で運営しているソフトボールチームへのスポーツ推薦も含め、毎年採用する人員は20数人に上っています。
平林金属(株)代表取締役社長 平林 実 様
- 張田
社長 - 最優先で取り組むべきこととして、人材の採用、育成には優先順を上げて経営資源を投入しています。社長就任後、人材確保のため働き方改革も先行して進め、10年間頑張って地道に取り組むことで人材確保に成果が出始め、激戦の中新卒も安定し採用できるようになってきました。経営コンサルタントの話では、いまの当社の労働環境条件であれば50人くらいは新卒応募が確保できる実力があるとのことなので、早くそのラインに到達したいと考えています。先日、地元の大きなホールで、高校生・大学生対象の合同企業説明会が行われたのですが、模型やパネルに加え、分かりやすいキャッチーな家電リサイクルも入れた動画を流して当社をPRしたところ、うれしいことにブースが多くの人で埋まりました。ようやく、家電リサイクルの力も借りて未来につながる採用活動ができるところまで来れたと実感し、感無量でしたね。
- 平林
社長 - 女性の採用も重要ですよね。当社は元々、女子ソフトボールチームを持っていて、引退後も勤めてくれる社員がいます。職場環境の改善としては、「ロッカーを直してほしい」、「トイレをキレイにしてほしい」と色々な要望があるので、積極的に応えていっています。そういった取り組みを続けてきたので、事務所や工場が働きやすい環境になってきていると思います。こうして問題のあるところを改善していくことが、人材採用にもつながっていくんだなとつくづく感じています。
- 張田
社長 - いま、「現場女子大作戦」と呼んで実践しているのですが、リサイクル現場への女性採用に力を入れています。現在、家電リサイクル現場女子は5名まで増えました。最初は男性のみだったコミュニティに女性が入るので心配もしておりました。初採用の1週間後には「女性いいですね。とても真面目です。」と男性社員からの報告があり、女性の力で家電リサイクルを支えていくことに手ごたえを感じ現場女子の獲得を決めました。女性に選ばれるために職場環境を良くしようと、現場女子会議を定期開催しています。平林社長のところと同じで、やっぱり最初に出てくるのは「女性専用の安心で綺麗なトイレ」の要望でした。女性の声を反映し安全衛生予算から即発注しております。これは私たち男性では気づかないことです。こうした女性ならではの視点を取り入れることで、女性の力で家電リサイクルを支え進化させていく仕組みづくりに今後も力を入れて行きます。
—— もし、家電リサイクルに参入されていなかったら?
- 平林
社長 - 家電リサイクルは、いまや事業の中心になっているので、取り組んでいない状態というのはなかなか想像しづらいですね。家電リサイクルの工場にはたくさんの人が必要なので、(参入していなかったら)ここまで人材採用に力を入れることもなかったと思います。また、安全とコンプライアンスに関する意識と取り組みが大きく変わりました。いま考えると、家電リサイクルを「やる」「やらない」の選択で、その後の事業運営に大きな違いがあったと思います。
- 張田
社長 - 元々、家業を継ぐ気はなかったので、父からの「家電リサイクルに参入するから帰ってこい」という電話が無かったら、きっと地元に帰ってきていません。つまり、もし家電リサイクルを行っていなかったら、この業界にはいないですし、いま現在もこの場にいないと思います。「もし」に思いを巡らせながら、20周年を節目に家電リサイクルに従事できることに感謝すると共に家電リサイクルの未来への責任を自覚し更なる発展に寄与していくことを決意しております。
—— 今後の事業展開については?
- 平林
社長 - 現在、当社のホームページをリニューアルしているところですが、新しいコーナーや新たなページが完成したら出し惜しみせず、すぐに公開するよう指示しています。先日も「サーキュラーエコノミー・パートナーシップ」の情報を発信してすぐに1、2件問い合わせがありました。そういったフットワークの軽さも大事にして、仕事を進めていきたいですね。また、今後ますます少子高齢化が進み、人口も減っていくなか、さらに当社は地方ということもあり、家電リサイクルの仕事も減ってくると予想されます。将来を見据え、新しい事業を模索するなか、これまで取り組んできた「地球に優しい」というカテゴリーに「人に優しい」というキーワードも加えて、食や福祉にも仕事を広げつつあるところです。
- 張田
社長 - 2030年までの中期経営計画を上方修正し、現在の売上100億円の3倍、300億円の達成を目指して取り組んでいます。具体的な内容としては、再生可能エネルギーなどを含めたエネルギー市場を視野に入れて、新しいビジネスを展開していく準備をしています。新規事業の開発にステージゲート制を取り入れているのですが、試行錯誤しながら皆でアイデアを出し1年が経ち、ようやくその数が100を超えました。最終ゲートをくぐったアイデアもいくつか出てきたのでこれからが楽しみです。新しいビジネス領域の開発は家電リサイクルを次のステージに導くためのものでもあり使命感を持って取り組んで行きます。
パナソニック ミュージアムの前で
笑顔の平林社長と張田社長、
パナソニック(株)リサイクル事業統括部のメンバー