家電リサイクル累計引取台数3億台到達記念イベント
「リサイクルプラント意見交換会」を開催
2001年の家電リサイクル法施⾏から23年⽬の2023年7⽉に、廃家電の累計引取台数が3億台に到達しました。
これを記念して、⽴命館⼤学 ⼤阪いばらきキャンパスでリサイクルプラント意⾒交換会が⾏われました。
リサイクルとビジネスの関係について研究されている立命館大学 経営学部の中村教授による家電リサイクルの解説、全国9つの家電リサイクルプラントによる意見交換の後、立命館大学の学生からご意見をいただきました。
中村教授による
「家電リサイクルの現状・実績」の解説
家電リサイクル法の施⾏
高度成長期以降、「埋立地不足」「環境汚染」「不適正管理」「不法投棄」などのゴミ問題が深刻になっていました。やがて、廃棄物やリサイクルに関わる制度や法を整備していく動きが始まり、2001年には「家電リサイクル法」が施行されました。
循環型社会に貢献している「家電リサイクル」
2001年の「家電リサイクル法」の施⾏から廃家電4品⽬の引取が⾏われ、施⾏から23年⽬の2023年7⽉に累計引取台数が3億台に到達しました。これは1世帯あたり約10台の廃家電が処理された計算になり、世界的に⾒ても有効に機能していることがわかります。
家電リサイクルによるCO2削減効果(年間)
資源回収によるGHG削減効果とフロン回収によるGHG削減効果の合計は約736万tとなっており、
これは九州+中国+四国地方の人口約2,330万人分の年間CO2排出量に相当します。
各リサイクルプラントによる意見交換
各リサイクルプラントの代表者により、家電リサイクルにおける取組み事例をテーマ別に紹介いただき、各工場での様々な創意工夫や取組みが話されました。
株式会社富士エコサイクル
「リサイクルの高度化への取組み」
同社ではリサイクルの高度化を実現するため、単一素材の比率を向上中。プラスチックのリサイクルには⽔を使⽤した湿式の選別装置が導⼊され、混合プラスチックからPPを⽩⾊と雑⾊に選別・回収されています。また、冷蔵庫とエアコンのコンプレッサーは同社で考案したシェルカット設備で、銅線や鉄のコアなど素材別に分離されています。
東芝環境ソリューション株式会社
「プラスチックのリサイクルの取組み」
家電リサイクル法の施行当初、家電4品目の再商品化率が約66%だったのに対し、現在では約87%まで向上。この20%の向上のために、同社ではプラスチックのリサイクルで大きく貢献されてきました。その1つとして、ミックスプラスチックの選別システムの導入があります。大型破砕機では離解体できない廃家電の塊を一旦全破砕したなかから金属類を取り除き、残されたミックスプラスチックを様々な選別技術により分離されています。
西日本家電リサイクル株式会社
「新技術導入(ガラスドア分離)」
国内唯一の廃家電4品目を処理するAグループ・Bグループの共用プラントのため、各社から多品種の廃家電の受け入れをされている同社。
最近市場で増加しているガラス扉の冷蔵庫からガラスを分離させるために、最新技術である「レーザーカット技術」を取り入れられています。単に分離させるだけでなく、さらに「キレイに」「早く」分離することを目標に、メーカーと協力して実証を重ねられています。
北海道エコリサイクルシステムズ株式会社
「作業環境改善の取組み」
北海道での例を見ない猛暑による体調不良や空調不足、昨今の異常気象による大雪のなかでの作業環境の改善の取組みについてご紹介。家電のなかに含まれる液体が凍らないように、また、低温で液化するガスに注意しながらの管理をされているなど、気温が氷点下になる寒冷地ならではの家電リサイクルのご苦労や対策などもお話しされました。
拓南商事株式会社
「地域住民の理解醸成への取組み」
同社は戦争で使用された鉄資源を活用した復興の取組みが始まりとなっており、現在では沖縄県の循環型社会を支える企業として活動中。また、地域貢献として工業団地内の清掃活動を実施されています。沖縄県主催の不法投棄パトロールにも参加され、地域住民からの理解の獲得に努められています。さらに、沖縄にある様々な離島からの廃家電の受け入れや、埋立処分でしか対処できなかった車のガラスを沖縄の伝統工芸品である「琉球ガラス」の原料として使用するなど、地域のリサイクルの促進に貢献されています。
株式会社釜屋
「災害廃棄物処理の取組み」
社員が自由にアイデアを出しあい、積極的に意見を取り入れられてきたオープンな社風の同社。
2011年に起きた東日本大震災での廃家電(災害家電)の対応やご苦労をご紹介されています。災害後、廃家電を回収する際に家電4品目以外の混入や、重機で雑に扱われる、津波被害による土砂まみれの家電や潰れた廃家電の対応など多くの障害や混乱があり、正しく運び込まれるまで1年近くかかったそうです。また、福島原発事故の放射線に汚染された家電が指定引取場所に持ち込まれたこともあり、独自で線量測定基準を定め、従業員の安全に考慮したリサイクルを実施されてきました。さらに最近では、避難解除される地域も増加し、そこから運び込まれる廃家電の対応など災害廃棄物の処理は未だに続けられています。
ハリタ金属株式会社
「女性が活躍できる職場への取組み」
同社では従業員が働きやすく、女性が活躍できる職場づくりを目指して働き方改革を実施。有給休暇の取得率は99.5%となっており、育休は男性も取りやすい仕組みづくりをされています。
また、職場環境を活性化させる女性従業員をリサイクル女子、通称「リサ女(リサジョ)」と呼び、女性の積極的な採用や働きやすい職場づくりを目指されています。スマートウォッチによる体調管理なども行われ、リサイクル事業のイメージをより良くするため、誰でも働きやすい・働きたくなる職場として認知されるように尽力。この働きやすい職場づくりについて知るために、岸田首相も同社に訪問されています。
さらに、リサ女である前田さんと山崎さんも登場されました。前田さんは副業可能などプライベートとの両立のしやすさや、困った時に声をかけてくれるなど職場の人間関係の良さを、山崎さんは時間単位での有給休暇取得など子育てがしやすい環境、男性と女性の体力差を埋めるための機器の導入・周囲のサポートなど同社の魅力をお話しされました。
平林金属株式会社
「地域貢献活動・女性活躍」
女性の採用を積極的に行っており、グループ全体で100名ほど、家電リサイクルのラインでは25名ほどの女性が働かれている同社。この女性の採用のきっかけは先代の社長がソフトボール協会の副会長で、国体に出場した選手の雇用先として手を挙げられたのが始まりだそうです。2005年に国体が終了した現在でも女子ソフトボールチームとして残り、OGや現役選手が同社で働かれています。
また、小型家電を扱う「えこ便」でも多くの女性が活躍中。正しいリサイクルの周知活動が行われています。女性ならではの分かりやすく、丁寧な説明により、岡山市の一般廃棄物のリサイクル率は高く、さらに東京オリンピックでのメダル作成のための金の回収活動では、東京に続く回収量という優れた成績を残されました。
同社でも女性従業員の2人がお話されました。1人目の花房さんはサーキュラーエコノミー推進部に所属されており、仕事のやりがいや「リサイクルで地球に恩返し」をモットーに熱意を持って働かれていることをお話しいただきました。2人目の岡﨑さんは家電由来のプラスチックの選別設備のオペレーターに従事。また、女性従業員を中心とした会「きらり会」で「安全パトロール」を実施されており、女性を中心とした安全面や衛生面の改善など、男女年齢問わず働きやすい職場づくりに取り組まれています。
パナソニックエコテクノロジーセンター株式会社
「海外見学者の積極受け入れ」
同社は見学されることを前提に建設されたリサイクルプラント。国内外・年齢問わずに開かれており、未来を担う世代のための環境学習の生きた教材として活用され、136を超える多くの国から見学者が来られています。
家電リサイクルについては、素材ごとの分別・回収を行い、「作る」・「使う」・「戻す」・「活かす」という流れで高効率・高純度での資源回収を実現。さらに様々な技術開発に取組み、「ゼロエミッション」の実現を目指されています。
最後に田玄取締役工場長から家電リサイクルに対する思いが述べられました。
「廃家電には長年の使用で埃がたくさんついています。従業員一同、その埃をまとった廃家電と正面から向き合い、我々リサイクリストとしての誇りを胸にさらなる資源循環・ゼロエミッションの実現に向けて精一杯取り組んで参ります。」
立命館大学の学生の皆様からのご意見
各リサイクルプラントの意見交換の後、参加された立命館大学の皆様からご意見・ご感想をいただきました。
その一部をご紹介します。
地域の特徴を活かした家電リサイクルの取組みを知ることができました。
また、機械解体のお仕事は男性が多いというイメージがありましたが、平林金属さんやハリタ金属さんのような女性の働き方に関する取組みが広まることでこのようなイメージが払拭されるとともに、女性の意見を取り入れることで職場環境の活性化につながると感じました。
ガラス扉をレーザーで分離できることに驚きました。また、メーカーさんと協力して、分別しやすい家電を開発していくことは循環型社会の実現のためにとても素晴らしいことだと思います。
釜屋さんの取組みで、災害家電の分離処理をされているというお話をお聞きするまで、「災害家電」という存在をまったく知りませんでした。災害家電の処理という未来のための取組みに、驚きと感動を覚えたことが印象に残っています。
普段よく耳にする「リサイクル」という言葉ですが、東芝環境ソリューションさんのプラスチックの選別や、西日本家電リサイクルさんのレーザーカットの動画で、最新の技術で成り立っているということがわかりました。今後もさらなる技術の発展でより正確で効率の良いリサイクルが行われることを期待しています。